2008年9月29日月曜日

9/29 Today エミール・ゾラが死ぬ(1902)……やっぱりお金抜きで人生は語れない

荷風と切っても切れないゾラが死んだ日:
エミール・ゾラ - Wikipedia: "エミール・ゾラ(Émile Zola, 1840年4月2日 - 1902年9月29日)は、フランスの小説家で、自然主義文学の定義者であり、代表的存在でもある。代表作に、全20作から成る≪ルーゴン・マッカール叢書(そうしょ)≫中の『ジェルミナール(芽月)』、『居酒屋』、『ナナ』がある。"
若い時代の荷風はエミール・ゾラに傾倒していた。書いていたのもゾラ風のものばかり。アメリカに行ってからの荷風の作風はゾラ的でなくなるが、幸徳秋水事件で「自分はゾラのようになれない」と絶望して江戸戯作者の道を選ぶなど、ゾラはずっと荷風にとって大きな存在だった。

あの時代までのフランスの小説は、バルザックにせよゾラにせよ、とにかくお金のことが、微に入り細に入り、書かれている〔おっと、イギリスのジェーン・オースティンやアガサ・クリスティーもそう。国とか男女の差はないのだ。西欧文明の本質か〕。明治時代のニッポンの文豪も、漱石なんかそう。「お金は汚い、カネがすべてではない!」という昨今の風潮は、自分だけは十分お金を貯め込んだ既得権集団が、自分の既得権を守るために広めた風潮。都市貧民は、もっとバルザックとゾラを読もう。

ゾラでは、これが面白い:

パリの胃袋 (ゾラ・セレクション)パリの胃袋 (ゾラ・セレクション)
´Emile Zola 朝比奈 弘治

藤原書店 2003-03
売り上げランキング : 298315

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

細かい細部の描写がすごい。「神は細部に宿る」。良妻賢母の主婦が世間体を気にする恐ろしい体制主義者となって主人公を抹殺するのだ。

2 件のコメント:

  1. 学生時代、仏文の授業でルーゴン・マッカール叢書を一年かけてほんの一部を読みましたが今ではあんな気力はありません。どこが面白いのかさっぱりでした。

    下宿で孤独な老人が死ぬ。家賃も滞納している。親戚だったか役人が死体を引き取りに来たら、家主の因業マダムがすかさず言う。溜まった家賃を払ってくれ、ベッドのシーツはうちのものだから、遺体とともに埋葬するのではなく洗濯して返してくれ・・・というような話が延々と。

    しかし、この悲惨で非情な情況は現代の日本にもあてはまるかも。

    ついでに洋書購読で短編ながら完読したのはカフカの In der Strafkolonie (流刑地にて)。これは面白かった。異常な話ですが。

    返信削除
  2. 確かに陰気なお話が多いですね。シーツで思い出しましたが、「自転車泥棒」で、亭主の自転車を質屋から返してもらうため、奥さんがベッドからシーツを剥ぎ取りますよね。シーツって自転車のかわりになるほど高いもんなんだと感心しましたが、あれは嫁入り道具の重要な品らしいです。女性にとって大切なものなんですよ。「自転車泥棒」のシーンも、これこそ西洋版「山内一豊の妻」としてみれば、また味わい深い。

    返信削除